賞金を配分するeスポーツ大会を開催するには―①賭博罪、賭博場開帳等図利罪との関係

 eスポーツの大会においては、高額の賞金が出されています。昨年カナダで開催された“The International 2018”では、優勝賞金11,223,582$(12億4828万6790円)で、賞金総額25,515,229$(約28億3780万円)と非常に高額なものとなっています。日本においても、昨年12月16日に開催された「Shadowverse World Grand Prix / 2018」で国内最高額となる100万$の優勝賞金が出されました。

 このような高額の賞金を出すことは、eスポーツのひとつの醍醐味と言えるかもしれませんが、他方で、刑法に規定されている“賭博罪”や“賭博場開帳等図利罪”に該当する可能性もあります。

 以下では、どのような場合に賭博罪や賭博場開帳等図利罪に該当するのか、どのような開催方法を採用すればそれらに該当しない適法な大会の開催ができるのかということを検討します。

 刑法185条は、「賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。」と規定しています。

 「賭博」とは、「偶然の事情に関して財物を賭け、勝敗を争うこと」をいいます。

 この「偶然」とは、当事者において確実に予見できず、又は自由に支配し得ない状態をいいますが、客観的に不確実であることまでは必要としません(大審院判決大正3年10月7日録20-1816、大審院判決大正11年7月12日集1-377)。

 つまり、当事者の能力が勝敗の決定に影響する場合であっても、当事者が任意に左右できないという意味で多少とも偶然の要素があればよいということです。そのため、ゴルフ、麻雀、囲碁、将棋等も「偶然の事情」に含まれ、当然ながらeスポーツも「偶然の事情」に含まれるということになるでしょう。

 したがって、eスポーツに関して「財物を賭け、勝敗を争う」大会は、賭博罪が成立することになりますが、具体的にはどのようなケースがそれに該当するのでしょうか。

 プロゴルフ大会やプロ麻雀大会では、eスポーツ大会と同様に高額の賞金が出されていますが、これが賭博罪に該当するのではないかという話は聞こえてきません。他方で、賭けゴルフや賭け麻雀は、賭博罪に該当するとされています。これらの違いから、eスポーツ大会を適法に運営するための方法が見えてきます。

 先ほど述べたとおり、「賭博」とは、「偶然の事情に関して財物を賭け、勝敗を争うこと」をいいます。簡単に言うと、偶然の事情に関して、ある当事者が得をすれば他の当事者が損をするという相互関係で勝負をすることです。

 プロゴルフ大会やプロ麻雀大会では、選手たちがエントリーフィー等の費用を支払ってはいますが、賞金は、大会運営にのみ利用されるエントリーフィー等とは全く関係のない、大会のスポンサーが拠出した金銭を原資にするものですから、お互いに勝負し合っている当事者同士の財産上の得失、損害、利益というものはないといえます。そのため、このような仕組みでは「賭博」に該当せず、賭博罪が成立しないのです。

 他方、賭けゴルフや賭け麻雀は、当事者が他人の賭け金を得られるか、自分の賭け金を失うかということを賭けて勝負しあっているわけですから、まさに「賭博」に該当します。

 すなわち、eスポーツの大会においても、参加料を徴収してそれを原資として優勝者などに賞金を出すと、賭博罪に該当します。それは、選手同士が参加料を賭けて競い合い、ある選手が参加料を失い、ある選手が賞金を得るという関係が成り立つことになり、「財産を賭け、勝敗を争う」ことに該当するためです。したがって、eスポーツの大会においても、プロゴルフ大会のように、スポンサーが賞金を拠出し、参加料を徴収するとしても、それと賞金が全く関係性を持たないようにして、大会を作り上げるべきでしょう。

 なお、「一時の娯楽に供する物」に該当する場合には賭博罪が成立しません。そのため、参加料を徴収してそこから少額の賞金を出すだけなら大丈夫ではないかとお感じになるかもしれません。

 しかし、「一時の娯楽に供する物」に該当するかどうかは、価格の小ささや費消の即時性を加味して総合的に判断されるところ、一般的には、その場ですぐに飲食する茶菓や食事等がこれに当たり、金額の多少にかかわらず金銭はこれに該当しないと言われています。そのため、どんなに賞金が少額であっても、参加料から拠出する方式の大会運営は、それだけで賭博罪が成立することになってしまいます。そして、そのような大会の主催者は、大会の主催によって収益を得ている場合、賭博場開帳等図利罪(刑法186条2項)に問われることになります。

 以上のように、“賭博罪”や“賭博場開帳等図利罪”が成立しない形でもeスポーツ大会を開催することができるということが言えます。

 ただ、このような形式で開催すれば何も問題がないかというと、そうではありません。刑法のほかにも検討すべき法律があります。それは、不当景品類及び不当表示防止法(いわゆる景表法)と風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)です。

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この記事を書いた人

2011年 京都大学法学部卒業
2013年 同志社大学大学院司法研究科法務専攻修了
2014年 司法試験合格
2015年 最高裁判所司法研修所修了(68期)
2016年 堺筋総合法律事務所 入所
2019年 富士パートナーズ法律事務所 入所

一つ一つのご依頼に真剣に粘り強く取り組んで参ります。皆様と率直に話をし、ともに悩み、問題の解決策をしっかりと見出していきたいと思います。一つ一つの案件やご相談を通じて成長し、皆様のより一層のご満足に一意専心して参ります。

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